LOVE IN THE
AFTERNOON

EPILOGUE

 パリの中央駅に着くと、もう電車の発車時間が後5分に迫っていた。
 アリオスは、電車のデッキに乗り込み、アンジェリークはホームから彼を見送る。
「また、忙しい日々になりそうだわ」
 本当は彼と一緒にこの電車でどこまでも一緒に行きたかった。
 だけどそれは、今となっては叶わぬ夢だ。
 アンジェリークは必死に涙を堪えてアリオスに笑いかける。
 その笑顔が余りにも儚くて、アリオスの胸を指す。
 手を伸ばして、この腕に抱きしめてやりたいと思う。
 しかしそれは、理性が出来ないと囁く。
 彼は、もう何も言葉をかけてやることが出来ない。
 掛けてしまえば、このまま離せなくなってしまうから。
 ただ"愛しい”という気持ちだけを、その眼差しに込めて伝える。
 電車がゆっくり動き出すのと同時に、アンジェリークもそれに合わせて走り出す。とめどなく溢れ出すなミサを、孟拭う余裕なんてない。
「あなたがいなくなっても平気! 今度、公爵がブルーのベンツを買ってくれるの! 私の大好きな色よ! だって、あなたは16番目の男だもん・・・。いなくなったって、いなくなったてへいきなんだから・・・」
 もう、我慢できなかった。アリオスは、初めて自分お気持ちに正直になる。
「あっ!!」
 突如、並走するアンジェリークの腰を抱き上げ、アリオスは電車の中に彼女を連れ込んだ。
「アリオス・・・」
「----もう、何も言うなアンジェリーク・・・!!」
 アリオスは、初めてアンジェリークの名前を愛しげに呼ぶと、彼女を抱きすくめ、深い、深い口づけをした。
 彼女の瞳に、初めて嬉し涙が光った。
 電車は、恋人たちを乗せ、加速してゆく。


「やりおったわ・・・」
 柱の影から二人の様子を見ていたチャーリーは、穏やかに微笑みながら、二人を載せた電車を見送った。
 アリオスが、アンジェリークを生涯幸せにすることが、わかった上での、祝福の微笑だった。



 8月5日、今日、アリオスとアンジェリークに、ニースの裁判所から、判決が下りた。
 裁判官は、二人の結婚を許可。
 今後、ニューヨークで、ふたりとも"終身刑"に服する・・・らしい。
 幸せになれや!! アンジェリーク!!!

FIN


あとがき「映画と私」
一週間に一回のペースで連載していた「LOVE IN THE AFTERNOON」がこれで完結です。
この映画は、1957年に公開された、ビリー・ワイルダー監督・脚色、ゲイリー・クーパー、オードリー・ヘプバーン主演の作品です。
私は、実は、「オードリーオタク」でして、髪型を真似するぐらいの大ファンです。(ちなみに「ローマの休日」ヘアにした時、「ウランちゃん」と呼ばれてましたが)
彼女の映画の中でも、実はこの「LOVE IN THE AFTERNOON」が一番すきなんです。
アンジェリーク版では、私立探偵は兄として登場させましたが、実際の映画では、父親が私立探偵でした。フランスの名優モーリス・シュヴァリエが演じていました。
ここがこの映画のお遊びのところで、昔から「堅物」で知られていたゲーリー・クーパーがプレイボーイの役を、プレイボーイとしてならしていたモーリス・シュヴァリエが堅物の父親を演じているとは、とても興味深くないですか?
この映画の原作は、クロード・アネの「アリアーヌ」で、エリザベート・ベルクナー主演で、1931年に一度映画が作られています。
この映画のDVD、ビデオが日本ヘラルドから出ていますので、ぜひ見てください。
最後までお付き合いいただきまして、有難うございました。2000.12.8 tink

次回ですが、皆様の読みたいものを選択していただきたいと思います。
ごいけんはBBSまで!!
1「SABRINA」
(オードリー・ヘプバーン、ハンフリー・ボガード、ウィリアム・ホールデン主演のロマンティックコメディ。パリに言って綺麗になった娘が、最初は弟が好きだったが、徐々に堅物の兄に惹かれてゆく。アンジェリーク、堅物の兄・アリオス、軟派な弟・オスカー)

2「MELODIE EN SOUS−SOL」
(ジャン・ギャバン、アラン・ドロン主演のフィルムノワール。引退した元ギャングが、若い男と一緒に、不可能といわれる強盗に挑む。アリオス・若い男、ヴィクトール・元ギャング。アンジェは・・・出てこないので、tinkが勝手に絡ませる予定(だったら、パロになんないか))

3 NOTTINGHILL
(有名女優と本屋さんの住む世界を乗り越えた純愛。ヒュー・グラント、ジュリア・ロバーツ主演のロマンティックコメディ。アリオス・本屋さん、アンジェリークが女優)

ご意見をお待ちしております。